Soundless Words

Home Sweet Home

「やっぱりエフの部屋って広くていいよね」 部屋にふたりでいつつも、目立った会話もなくお互いに本だの雑誌だのを眺めてしばらく。彼女が不意に発した言葉にエフは隣を見やった。言葉の通り羨んでいるのか、彼女はぐるりと部屋の内部を見回してい…

予兆の炎

※『DOUBLE FACE』 イベントネタ  騒ぎが起こって、それに気づいてからの対応ではすでに手遅れだった。気付けば基地は大爆発の有り様で、新型兵器どころかすべてのものが完全に破壊された状態となった。この規模の爆発で、…

幻に見せられたなら

※ねつ造IFルート  一人の軍人が亡くなったらしい。少人数での葬儀が行われた。軍の関係者が埋葬されるこの場では、特別珍しいことではない。墓地の管理者として、軍の担当者から今回の料金をもらい管理部屋へと戻った。だがふと窓へ…

上書きの数

また、随分と付けられたものだなぁと思った。全身くまなくというわけでもないけれど、私の体には点々と赤い跡がある。新しく付けられたものもあれば、薄れていたところに重ねて付けられたものもある。まぁ、服を着て隠れるところばかりなので、いいと言えばい…

愛深き君の眠り

※『愛しい君に光あれ』イベントネタ。IFルート死ネタ注意。  車が揺れた。今夜は風が強い。遠征中の夜、私の寝床である車を尋ねる声があった。 「中尉、夜分に申し訳ありません」「はい。どうかした?」「前線の兵から、…

赤い大輪を

※IFルートの死ネタ注意。  体が熱くてとても痛い。わずかに首を動かして自分の手を見ると、真っ赤に染まっている。赤色は好きだけど、この赤色は黒が混ざっているようで気持ち悪い。血のような赤、とは言うけれど、実際の血の色はち…

あの時のあの子

誰かが泣いている。聞こえる声は確かに泣いている。暗い周囲を見回してみたけれど、見回す必要などなかったらしい。その誰かは目の前にいた。どうして私はすぐに気づかなかったのか。女の子が泣いている。大人には程遠い、本当に少女と言える子どもだ。その場…

酔い回り

なんとはなしに食堂へ着いて、目的もなくここへ来たことを後悔した。それなりの広さである食堂のテーブルの一角。そこに目をやった途端に頭が痛くなった。 「あひゃひゃひゃ! んだよ89、もうダウンかよー!」「……るせえな、まだ、いけるわ……

野良の良犬

『好き』とはあまり言わない。彼からに至っては言われたことがない。言われないから、聞いたことがない。でもきっと、たぶん、おそらくは。好かれていると思っている。いや正しくは、思っていたい、だ。少なくとも私は彼のことを好きだ。大なり小なり、そうい…

始まればふたりの世界

ふと思い至っただけだった。隣を歩く彼女を少し見ると、唇に目が留まったというだけで。元が銃と言えど、体は人そのものなのでそういう欲求も湧く。徐に、自分の唇を指でなぞった。 「ねぇ、ちょっと」「ん? どうかした、」 彼女の腕…

始まり方はいつもおかしい

目を閉じた。唇に柔らかいものが触れた。距離の近さを証明するように、自分のではないいい香りが鼻をくすぐった。長くなかったはずだけど、実際はどのくらい続いたのかわからない。やがて唇に触れていた感覚が離れていく。すう、と唇が冷えるような気がした。…

聖夜限定のスペシャル

今日と明日は世界中で共通するクリスマスというイベントだ。私は特に予定もなかったので、ただいつものようにその二日間を過ごして終わるはずだった。しかしつい昨日になって、今日の予定ができた。 『明日、マスターに捧げるピアノ・レセプション…