月が昇っても、
わたしは庭をうろうろと歩いていた。夕方の食事の時間なのにウインディが来ないのだ。食事の時間と場所は決まっていて、いつもウインディはきちんとその時間にいる。でも最近はその習慣はあまり守られていなかった。特に夜は。遅れてくることが増え、こうして…
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初見と発見
その日、アーロンがいつもより早く起きたことに特に理由はなかった。ただ単に、ふと目が覚めたらそれがいつもより早かったというだけで。ベッドではなく、床に布を敷いて眠っているルカリオもまだ目覚める様子はない。この部屋にベッドは一つしかないが大きさ…
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消える水泡
「今日のブレンドはカゴの実ですね」「さすがリーン様、正解です」 見事にその日のお茶にブレンドされたきのみを当てたリーン様を、素直にすごいと思った。長年お茶を飲み続けているが故の慣れなのかはわからない。でも自分が用意したものをすぐに…
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先の早見
アーロン様とルカリオがオルドラン城に来て、一カ月ほど経っただろうか。波導がどのようなものなのかは未だにわたしはよくわからないが、誰にもできるわけではない特別なことだという時点ですでに彼らは尊敬に値する。しかし、詳細を知らないために彼らへの称…
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お茶を飲むなんでもない日にて
「よし、今日はここまでにしよう。明日、今日の分を反復してから次の段階へ進む」『はい!』 オルドラン城から少し離れた森の中で修業は行われていたが、いい頃合いだとアーロンは一区切りをつける。ロータの町とオルドラン城をつなぐ長い橋を渡り…
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青の始まり
今日からオルドラン城に新しい人が来る。わたしが知っている情報はそれだけだった。そのこと自体は数日前からあらかじめ聞いていたので、すでに知っている。その人が入ることになる部屋の用意もしたけれど、どんな人が来るのかは知らない。男なのか女なのかも…
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諸注意
アニメ映画『ミュウと波導の勇者 ルカリオ』に登場したアーロンとルカリオの波導組とのお話。 映画の序盤や回想シーンでの『まだモンスターボールが無かった時代』が舞台です。映画を参考資料としていますが、時代背景、モブキャラクターなどいろ…
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