期せずして波風
剣の日課は訓練が始まってからも続けているけれど、今までよりもはるかに少ない内容に減らしていた。自主的なのも結構であるけど、それが訓練に響いては元も子もない。朝起きても瞼は重い。取れ切れていない疲れが徐々に溜まっているのか、体を起こすのが億劫…
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それなりの理由があったので
「女王様は何考えてんだろうな」 訓練の昼休憩中、突然そんな会話が聞こえた。常に同じ班員同士でいろという決まりはないが、皆ある程度知った者同士でいるほうが楽なので休憩も班員同士で集まっていることが多かった。話が聞こえたのは、わたしと…
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放たれる弾丸
箱を開けて服を取り出す。白いシャツを頭からかぶり、セットであるズボンをはく。さらにもう一つある箱を開けると、深い青色の小物それぞれが姿を見せる。群青色というのだったか。その中でも最も存在感のある、甲冑の役割を果たす装具を身に付ける。布製なが…
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それの始まりのように
「だめだ」「嫌です」「だめだと言っている」「わたしは嫌だと言っています」 先ほどからアーロン様の青い目はわずかに吊り上がり、厳しい視線を向けてくる。アーロン様のそんな表情は今まで見たことがなく思わず弱気になってしまうが、逸らしたら…
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訊きたいことがあるのです
闘技場でルカリオとウインディは軽めの手合わせを終えた。闘技場を出てウインディと別れる。彼はこれから食事の時間だ。決められた食事の時間があるようだが、ウインディは何度かそれを破っているのをルカリオは知っている。その原因が自分との手合わせにある…
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落としたひとかけら
「アーロン様、世界のはじまりの樹をご存知ですか?」「もちろん。一度だけだが行ったことがある」 やっぱり。アーロン様が知らないはずはないだろうと思ってはいたけど、行ったことがあるということにわたしは驚いた。 「本当ですか!…
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指かかる引き金
今日は公務としての会合がある。いくらリーン様の侍女といっても、さすがに会合に出るようなことはない。わたしの仕事はリーン様の身の回りのお世話であって、政(まつりごと)に口を出せるような立場ではないのだ。いつもなら町に出てお茶請けを作るための材…
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水面にたゆたう二人
会う人は会釈をする程度で、その様子は明らかに敬遠だとわかる者もいたのに、最近はどうしたのだろうと不思議に思っている。 「アーロン殿、こちらにいらっしゃいましたか」 廊下で声をかけられて振り向くと、白い調理服を着た中年の男…
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波打ち際の一人
今、アーロン様は孤独にひどく近い状態にあると思った。完全な孤独にならないのは傍にはルカリオがいるからだ。だけどそれ以外には、この城でアーロン様を慕い、支えになる人はどれほどなのだろう。どれだけの人が、アーロン様を心から敬っているのだろう。敬…
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さざ波の水中に一人
そろそろ来る頃だろうかと、アーロンは本から視線を外した。すでに半ば習慣となったせいか、体内時計には彼女が来る時間が組み込まれたらしい。いつもなら、ちょうど窓を見たタイミングでエストレアの姿がそこにあるのだが、今日は違った。誰もいない。太陽の…
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再見と遠見
寝る前の読書というのはいいものだと思う。アーロン様を見習い、最近は寝る前に少し本を読むようにしている。しかし、今わたしが読んでいるのは厳密には本ではない。城の庭師さんに頼んで貸してもらった、城内に植えてある植物の一覧表だ。先日、アーロン様が…
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陽はまた昇る。
今日はなんだか調子がいい。木剣を振る腕に余計な力は入っていない。足の踏み込みも軽い。体全体も楽に動く。素振りの回数増やそうかな。ああ、でもやっぱりやめよう。どこかを痛めたりしたら困る。調子がいいことに甘えて余計なことをすると後が大変になる。…
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