ラプソディ・ウィズ・ブルー

憧憬的セレナーデ

「なぁ」「んー?」「今更だけど、ほんとにうちじゃなくていいのか? 家賃とか大変だろ」「今はそこまで貧乏じゃないよ!」 営業後に厨房の片づけをポッドくんとしていると、そんな話を振られた。数週間前にサンヨウシティへ戻ってきた私は、レス…

必然的カルテット

「すみません、注文お願いしますー」「はい、今参ります」 声をかけられてテーブルへ向かう。えーと、と注文を述べようとした女性のお客様はこちらを見て、あら……とまばたきをした。 「くん……?」「え?」「あ……、ご、ごめんなさ…

要因的カデンツァ

「……姉さん、って」 私の話を聞いた三人はとても驚いていた。そんな表情をされるのは、もう慣れっこだ。 「大人気モデル且つライモンシティのジムリーダー。キャッチコピーはシャイニングビューティー。みんなも知ってると思うけど、…

例外的カノン

コーンだけでなく、デントとポッドもの話題を出すことはなかった。出してはいけないような気がしていた。腫れ物に触るような感覚があった。あまりにもが唐突に消えてしまったからなおさらだった。お客から「くんはどうしたのか」ということを訊かれたりする以…

追憶的インテルメッツォ

「あの、コーン君。最近くんを見ないけどどうかしたんですか?」 注文を取っていたお客からの質問にコーンは笑い返した。 「ああ、彼でしたらここを辞めてしまいまして」「ええ!? どうして……!」「諸事情らしいので、こちらも詳し…

終息的トロイメライ

閉店間際の時間、コーンがテーブルの片づけを始めるとが最後の客に声をかけていた。 「お客様、申し訳ありません。そろそろ閉店の時間となってしまうのですが…」「あ、もうそんな時間!?」「うわぁ、長居しすぎちゃってごめんねくん」「いいえ。…

感傷的ノクターン

三つ子の自宅に居候させてもらい始めてしばらくが経った。こんな風に住み込みにさせてもらったり、住み込みになってからはまかないの食事付きになったし、なんだかとても優遇されている気がしている。さすがにエモンガやシママの食事は含まれることはないが、…

専門的カンタータ

最近ジムへの挑戦者が少なくなったなと思っていた。私には特に関係ないけれど、近々今季のイッシュリーグが開催されるようだ。その時期ならばもうすでに挑戦者はバッジを八個集め、開催場所を訪れているはずだ。ポケモンリーグは大きな祭典だ。見に行く人が多…

隣接的ディベルティメント

風邪をひいた昨日の夜、仕事を終えた三人が部屋へ来てくれた。 「今日はすみませんでした……」「いいって。でもってあんまり風邪とかひかなそうだけどなー」「ポッドくん、それは悪い意味で言ってる?」「悪い意味?」「何とかは風邪をひかないと…

偶発的ファンタジア

「、そこの砂糖を取ってもらえますか?」「あ、うん……」 コーンくんに言われて、砂糖のケースを手に取り差し出す。でもコーンくんは受け取らない。どうしたんだろう。それに加え、みるみる顔をしかめていった。 「あなたの目は飾り物…

称賛的オブリガート

時々忘れそうになるが、このサンヨウレストランはイッシュ地方におけるポケモンジムのひとつだ。ポケモンリーグへ出場するためには、最低八つのジムバッジを所持している必要がある。どの地方でもそれは共通の決まりだし、私のようにリーグ出場を目指している…

変則的カプリッツィオ

お昼時のピークを過ぎたため、今は注文の波も落ち着く時間だ。私もフロアに出るようになってからは使用済みの食器を片づけることに時間を割けなくなったので、私はこの時間、ひたすら洗浄機に食器を入れては片付ける。他の三人はこの後に備えてフルーツやクリ…