エフ×世界帝軍女子兵士シリーズ『Soundless Words』と同一夢主の別シリーズ。
読む前にこちらをご一読ください。
■無印時代
私が「今」ではなかった頃
「少尉」 呼ばれて振り向けば一般兵がいた。一般兵は個別番号にて管理されるので名前は知らないが、彼の腕についている番号は私がいる部隊の、さらに下部部隊の番号だ。私が直接率いているわけではないけれど、言ってしまえばつまり直属の部下にあ…
その邂逅
引き金を引く。弾が連射されるが、相手も馬鹿ではない。物陰に隠れてかわしていく。弾がなくなった。太腿に装着しているベルトに手を伸ばし、弾倉を一瞬で取り替える。相手からの発砲を廃墟の壁に隠れてやり過ごす。周囲を見れば、引き連れていた隊の一般兵が…
兵士の休日
「いいとこの奴っぽいけど、痛い目に遭いたくなかったら金目の物置いてけよ」 路地裏で五人の男に囲まれ、そんな安っぽいセリフを吐かれた。ここも、綺麗な街並みに似合わずあまり治安が良くないらしい。取り締まりの対象に入れておこう。目の前の…
Who are you?
(※DOUBLE FACEイベントネタ) ガスマスクを着けたままでいるのはあまり好きではないけれど、この場所ではしょうがない。新兵器の開発基地では、良くも悪くも何があるかわからない。直接の関わりが薄い者たちに顔を見せる必要もないだ…
たくさんの中の一人
呼び出しを受けたと思ったら、一枚の紙を渡された。 「中尉、急で悪いが、今夜諜報に出てもらえるかい」「はい。……それは構いませんが、急ですね」 軍に援助をしている者らが、レジスタンスに情報を流しているという話があったらしい…
天使たちの潜入
指定のポイントまでは手配された車で移動した。そこからは少しだけ歩くことになる。 「車で移動できないとは、非常に困るね」「大した距離じゃないから我慢してね」 私たちの降りた車が移動していった途端にミカエルは文句を垂れた。文…
Intelligence Mission
全盲だが天才的なピアノの腕を持つ青年と、その全盲ピアニストを献身的にサポートする婚約者。そんな設定の下で会場へと入るも、さすが上流の人間はドラマチックなことをすぐに信じてくれる。ミカエルと腕を組んで、グラスを片手に上流貴族へ偽名を名乗り、貼…
いつでも前を向いている
私の体には傷がある。それはある意味当たり前のことだった。今の私は世界帝軍に属する者だ。例え階級が低かろうとも、軍人である以上、戦場に赴く以上、大なり小なり傷を負うことはあるのだ。私の記憶には傷がある。子供の頃、おそらくは当時十歳くらいであっ…
誇りあるアメリカ民兵へ
狙撃手は自分の居場所を知られてはならない。自分の場所を知られたが最後、自分の命もそうだが仲間の命も危うくなる。狙撃手が狙いを外した場合、その射撃によって威嚇されたと受け取った敵は勢いと攻撃をより強める。そしてその勢いと増した攻撃を受けるのは…
問い、正義とはなんであるか
※後半の少しだけR軸。 一度目の引き金を引いた。その時は手が震えた。二度目の引き金を引いた。物が壊れ、ガラスが割れた。三度目の引き金を引いた。──人が、死んだ。 「ちょっと、何ボケっとしてんのよアンタ」「あぃ…
『行けるところまで行き、死ぬべきところで死ね』
ふと気が付いた途端、周囲の喧騒が耳をつんざいた。私は気絶していたらしい。いったいどうして、などと自分の状況も把握できないほどバカではない。今は、イレーネ城がレジスタンスに攻め入られている真っ最中だ。私は、南の門からのレジスタンスらの侵入を防…
■Rhodoknight時代
そして再び始まった
荷物を自室に置きに行くのもそこそこに、報告のために理事長室へ向かう。入室を許可されたので規律ある挨拶と共に私は入室した。今回のドイツ支部への出張に関する報告書を提出すると、時間をかけずに目を通したシド理事長は真剣な顔で口を開いた。いや、理事…
かつて敵対していた者たちよ
士官学校にて貴銃士も通常授業に混ざってもらうという試みは、初日から頓挫することになった。個人的には、やはりだめだったか、と思うところではある。しかしながら、もしかしたらきちんと授業を受けてくれるのではないかと思いたい気持ちはあったので異議は…
生きねばならない導きを
※性別描写なし、名前なし、ほぼセリフなしマスターがいる。ロドスト・ドイツ編後の時系列。 「作戦で何かあった時、無理はしなくていいんだよ」 マスターである候補生にそう言うと、その人は少し首を傾げた。まだ学生の身…
前略、遠い国のきみへ
※ロドスト・日本編後。 候補生と、絶対高貴に目覚めた十手が帰国した。鎖国国家である日本に行くのは正直どうかと私は思っていたが、十手が絶対高貴に目覚めるというプラスの結果をもたらしていた。 「報告書の提出はこれ…
親愛なる友人は何を思うか
※2021年クリスマスイベント後。 クリスマス当日は、ベルガーが起こした被害の対応と処理に追われてしまい、ラッセルと恭遠と共に黙々と書類と向き合うハメになった。なんとかそういった作業も終えて、もう年末まで片手で数える程…
離脱の呼び水
「お待ちしていました。中尉殿」 そう言って恭しく頭を下げた者は、体格と声からして男だというのは理解できた。ガスマスクに隠れていて、顔は見えない。対峙した私たちを、暗闇の中でもわずかに差し込む月の光が照らしてくれる。東門の奥。本来立…
アフターサマーバケーション
※ロドスト・アメリカ編後。 夏休み期間中、私は士官学校に残り、いたって平和に過ごしていた。特に欲しいものがあったわけではないけど、街をぶらりと見て回ったり、トレーニングをしたり。さて、大統領のご厚意でアメリカへ呼ばれた…
愛した君たちがいるこの世界で、
※ベルギー編準拠。長め。 「私も、ですか……?」 呼び出された部屋で理事長と対面しながら、私は思わず問い返していた。 「ああ。今回の、ベルギーから候補生へ宛てた招待には君も同行してもらう」 理事長から…
私はまた君たちを愛している。
※これの続き。ベルギー編準拠。 十手からの申し出で、サリバン邸ではなく貴銃士たちの住む屋敷に滞在することになった。仮にも候補生の上官というためなのか、私は一人部屋を宛がわれた。私と同部屋で何も気にしないのはライク・ツー…