Soundless Words

世界帝軍所属の女兵士とエフ。

 

※オムニバス短編。
※2022年8月現在、Rにエフが未登場なので基本的に無印の時間軸。無印のイベントストーリーネタ等も含みます。

 

 

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  • 使える愚図

    「なぁに、またアンタも付いてくるの?」 出撃のために軽く支度をしていると、エフが断りなく部屋の扉を開け放ってきた。マナーとしてノックぐらいしろよと思いつつも、こういうのは一度や二度ではない。大人の対応でスルーしてやり「うん」と返事…

  • Make up for me.

    化粧は得意ではない。元々あまり興味がないことで、軍に属している者だから必要も感じない。その上、たいていがガスマスクを着けているのだから意味がない。しかし今回はやむを得ない事情があるので、間に合わせのコスメで適当に肌を彩る。 「………

  • 私とあなたと

    撃たれた。それはわかった。そこからは記憶が曖昧であまり覚えていなかったけれど、目を開いた時には世界帝府の医務室にいた。体が痛む。当たり前か。そこで改めて、ああ、そういえば私は撃たれたのだった、とどこか他人事みたいに考えていた。 「…

  • Enchantée

    世界帝が特異な超常の力を得たというのは、以前に聞いたことがある。下の兵には、あまり詳しくは知らされていないけれど。その力によって、軍の保持する銃から不可思議な存在を顕現させた。銃から人の姿として現れたその者たちは現状『貴銃士』と呼ばれ、レジ…

  • めんどくさい彼と彼女

    ニコイチだと戦闘でつらくね?不意にそう訊ねたことに理由はなかった。ただなんとなく。自分ら貴銃士との出撃がある一人の女の兵と、エフは共に出撃することがわりと多い。仲も悪いようには見えない。だからこそ、戦闘のときにそちらへ意識が向いたりしないの…

  • 聖夜限定のスペシャル

    今日と明日は世界中で共通するクリスマスというイベントだ。私は特に予定もなかったので、ただいつものようにその二日間を過ごして終わるはずだった。しかしつい昨日になって、今日の予定ができた。 『明日、マスターに捧げるピアノ・レセプション…

  • 始まり方はいつもおかしい

    目を閉じた。唇に柔らかいものが触れた。距離の近さを証明するように、自分のではないいい香りが鼻をくすぐった。長くなかったはずだけど、実際はどのくらい続いたのかわからない。やがて唇に触れていた感覚が離れていく。すう、と唇が冷えるような気がした。…

  • 始まればふたりの世界

    ふと思い至っただけだった。隣を歩く彼女を少し見ると、唇に目が留まったというだけで。元が銃と言えど、体は人そのものなのでそういう欲求も湧く。徐に、自分の唇を指でなぞった。 「ねぇ、ちょっと」「ん? どうかした、」 彼女の腕…

  • 野良の良犬

    『好き』とはあまり言わない。彼からに至っては言われたことがない。言われないから、聞いたことがない。でもきっと、たぶん、おそらくは。好かれていると思っている。いや正しくは、思っていたい、だ。少なくとも私は彼のことを好きだ。大なり小なり、そうい…

  • 酔い回り

    なんとはなしに食堂へ着いて、目的もなくここへ来たことを後悔した。それなりの広さである食堂のテーブルの一角。そこに目をやった途端に頭が痛くなった。 「あひゃひゃひゃ! んだよ89、もうダウンかよー!」「……るせえな、まだ、いけるわ……

  • あの時のあの子

    誰かが泣いている。聞こえる声は確かに泣いている。暗い周囲を見回してみたけれど、見回す必要などなかったらしい。その誰かは目の前にいた。どうして私はすぐに気づかなかったのか。女の子が泣いている。大人には程遠い、本当に少女と言える子どもだ。その場…

  • 赤い大輪を

    ※IFルートの死ネタ注意。  体が熱くてとても痛い。わずかに首を動かして自分の手を見ると、真っ赤に染まっている。赤色は好きだけど、この赤色は黒が混ざっているようで気持ち悪い。血のような赤、とは言うけれど、実際の血の色はち…

  • 愛深き君の眠り

    ※『愛しい君に光あれ』イベントネタ。IFルート死ネタ注意。  車が揺れた。今夜は風が強い。遠征中の夜、私の寝床である車を尋ねる声があった。 「中尉、夜分に申し訳ありません」「はい。どうかした?」「前線の兵から、…

  • 上書きの数

    また、随分と付けられたものだなぁと思った。全身くまなくというわけでもないけれど、私の体には点々と赤い跡がある。新しく付けられたものもあれば、薄れていたところに重ねて付けられたものもある。まぁ、服を着て隠れるところばかりなので、いいと言えばい…

  • 幻に見せられたなら

    ※ねつ造IFルート  一人の軍人が亡くなったらしい。少人数での葬儀が行われた。軍の関係者が埋葬されるこの場では、特別珍しいことではない。墓地の管理者として、軍の担当者から今回の料金をもらい管理部屋へと戻った。だがふと窓へ…

  • 予兆の炎

    ※『DOUBLE FACE』 イベントネタ  騒ぎが起こって、それに気づいてからの対応ではすでに手遅れだった。気付けば基地は大爆発の有り様で、新型兵器どころかすべてのものが完全に破壊された状態となった。この規模の爆発で、…

  • Home Sweet Home

    「やっぱりエフの部屋って広くていいよね」 部屋にふたりでいつつも、目立った会話もなくお互いに本だの雑誌だのを眺めてしばらく。彼女が不意に発した言葉にエフは隣を見やった。言葉の通り羨んでいるのか、彼女はぐるりと部屋の内部を見回してい…